“地方教会”運動は 1960 年代の初期に中国からアメリカにもたらされて以来、もっとも厳しい危機を経験している。よく知られているウォッチマン・ニー(1972 年死亡)の前の同労者であったウイットネス・リーに率いられたその運動は他のクリスチャングループとの議論と衝突をしばしば経験してきた。しかしながら、リーと彼の息子フィリップ・リーの実行に対する失望が増大するにつれ、前例のない意見の食い違いがその運動の内部で、台湾からヨーロッパ、アメリカに至るまでもちあがってきている。
“幻の再考”と題された20ページのパンフレットがその意見の食い違いを扇ぐことになった。 1988 年 1月にそれが中国語で出版されてから(現在は英語に翻訳されている)、その運動の内部で多くのことが起こった。
匿名で出版されたそのパンフレットは、台湾と合衆国の地方教会に広く流布されているが、地方教会に近い人々によってウイットネス・リーと確認されている“X氏”は、疑惑のもたれる事業に従事したことを確証し、また彼はその後破産に至ったその会社において“自分の長男を社長に据えた”と述べている。“多くの聖徒がその事業に自分の生活の蓄えを投資するように圧力を受けた。”
そして会社が破産に至ったとき、リーは彼の一人の同労者をして投資した者達に“投資した金は献金であるとみなし、返済を求めないように”と説得させ、また、“多くの者がこれでつまずき教会を離れたが、他の払い戻しを求め続けた者達はX氏によって無視された”と述べている。
またそれは、“X氏”はもはや“真の使徒”ではないことを示唆し、地方教会にある聖徒達に対して、人にではなく聖書に従うように要請している。また、X氏は聖書の教えとまたウォッチマン・ニーの教えからも逸脱していると告発している。例えば、彼はどの時代においてもただ一人の霊的指導者がいるのみであり、そして今日彼がそれであると教えていると告発している。また“X氏”のいくつかの地域における振舞いを疑問視し、彼は“高ぶり”、深刻な誤りを犯している彼の“次男”(以前教会員だった者達によってフィリップ・リーと確認されている)を訓練せず、同労者達や長老達を根拠無しに侮辱し、彼に反抗するかもしれない年長のより成熟した指導者達を、“傲慢な”しかし忠実な若い追従者達と置き換えることに熱を入れた、として告発している。
“地方教会”では、一つの町に一つの教会があるべきであり、またウイットネス・リーに率いられているその運動は神の終わりの日の教会の“回復”であり、それはキリストの再臨に先立つものであると教えられている。神、キリスト、人、そして教会の教義に関するそれらの教えは多くのクリスチャンの著者によって疑問視されてきた。彼らにはウォルター・マーチンやクリスチャン・リサーチ・インスチュート(The New Cults, 1980)を含む。(マーチンは、しかしながら、彼らを非クリスチャンのカルトとは言っていない。)
リーは法廷を利用して彼を批判する少なくとも2冊の書物を出版界から排除した。それらにはニール・ダダィとSCP(すなわち、カリフォルニア、バークレイの Scriptual Counter-feits Project)による“神-人”(1981)を含んでいる。
そのセクトに反対する書物については、パンフレット“幻の再考”は次のように述べている:“それらはすべてが事実を述べているとは言えないが、X氏に関する彼らの観察の多くは正確で彼らの想像によるでっち上げとは言えない。疑問視される点については、X氏のミニストリーの出版物からは削除されているために、確認をとることは不可能である。しかしながら、数多くのカセットやヴィデオがいわゆる反対者達の観察を証明している。[SCPに対する]訴訟の期間、聖徒達は警告され沈黙するように圧力をかけられ、そして多くの者は主の回復のために自発的に沈黙した。外部の者がインタビューを求めてきたいくつかの機会には、そうされても‘安全’な特別な者だけが選ばれたのである。”
その論争の影響は広い範囲にまで及んでいる。前長老だったロバート・スミスは、世界中のいくつかの教会はリビング・ストリーム・ミニストリー・オフィス(世界的な出版と務めのための機構で、フィリップ・リーによって経営され、またウイットネス・リーの権威を代表している)との関係の存続に対して疑問を持っていると言う。少なくとも一つの教会、ローズミードにある教会(カリフォルニア)はそれとの関係を破棄した。
離反の程度は世界的にみるととても変化がある。ある者たちはリーを放棄したいとは思ってはいないが、彼がある側面において間違いを犯したことを信じており、修正を要すると考えている。他の者達はもはや個人的には彼に従いきれないほどの誤りをリーは犯していると信じてはいるが、しかし彼の教義に対しては敬意を払い続けており、“主の回復”の内部における修復を求めている。また他の者達はリーの教えとともに彼の指導をも拒否している。後者に含まれる多くの者達はその運動の外部の教会に出席している。
アメリカにおける運動の指導者だったウイリアム・フリーマンは、彼が長老をしていたシアトルにある教会と絶縁し、アリゾナへ移住した。彼はSCPに対する訴訟においてとても目だった人物であった。スミスによれば、フリーマンはある幻滅感に悩んでおり、現在はそのセクトにまったくいるわけでもなく、まったく出たわけでもないと言う。
長年の間運動の指導的教会であったアナハイムにある教会(リーはその市に住んでいる)は、その論争にもっとも厳しく見舞われた教会の一つである。“私たちは明らかにいくつかの困難を有している”と教会の指導者であるジョン・インガルスは言っている。しかしながら、教会はリーと完全に断絶したわけではないとインガルスは言う。彼は教会が直面している多くの特異的な問題を詳しく述べたがらない。
8月28日の教会の集会の記録によると、一人の長老が教会員に対して、リビング・ストリーム・ミニストリー・オフィスにおける行為と“実行から私たちを分離する”と語り、そのオフィスは“教会の上に何等の権威も持たない”と述べた。さらに彼は“他の地方のいかなる教会の長老たちが私たちに何をせよと語ることを好まない。私はアナハイムにある教会においてこのようなことが起きたことを残念に思う。”と語っている。
10月9日の同所の荒れた集会のテープは、リーに対する同教会の不満の源は(他の諸教会、例えばシュツットガルトにある教会[西ドイツ]のそれも同じであるが)、リーの息子フィリップの“罪深い”行動を取り扱うことにおいて彼が失敗したことであると明らかにした。またそれはフィリップ・リーによって10年にもわたって犯されてきた“ひどい不品行”と他の罪の数々を、リーはそのことを知っていながら、彼と彼の同労者はそれに耐え、これらの行為を覆い隠したことも言っている。このことのみでなく、リーとその取り巻きはつい最近フィリップをウイットネス・リー自身の務めと(それを推進する者であるとして)同一視し、そして非公式にではあるが、しかし諸教会の上には有効な権力をもつその地位に彼をすえることを押し進めている、と反対者達は続けている。フィリップ・リーは伝えられるところによると台湾におり、コメントを求めることはできなかった。−エリオット・ミラー、ウイリアム・M・アルノー